研究概要 |
これまでに、海外の既存の尺度をもとに、2つのカテゴリー(認知領域,社会性領域)に分類される8つの下位尺度(1.短期記憶,2.長期記憶,3.空間と時間の見当識,4.発話,5.実用的スキル,6.活動性と意欲,7.情緒,8.行動の障害)からなる試案を作成した。 試案の評価者間信頼性を検証するため、2人の評価者による実測データをもとに、各下位尺度得点の級内相関係数を算出した。この結果、値は0.67から0.99の範囲にあり、海外の同様の尺度に比べて遜色がなかった。また、内的一貫性の指標であるアルファ係数は0.96と高かった。これらから、今後、標準化に向けた大規模なデータ収集にあたって、現在の試案を用いて差し支えないものと判断できた。 尺度の構成概念妥当性を検討するため、認知領域、社会性領域の2つのカテゴリーに対応する潜在変数をおき、各下位尺度得点を観測変数として、確認的因子分析モデルの共分散構造分析を行った。下位尺度の現試案におけるカテゴリー分類を用いたモデルでは、適合度指標の値はいずれも不良であった。しかし、潜在変数を1つ加えるなどしてモデルを修正することで、良好な適合度指標の値を得ることができた。本尺度は、カテゴリー別得点によって認知症の有無を判定することを想定しているため、今後データを蓄積する中で、下位尺度のカテゴリー分類ないし集計・判定方法について再検討する余地があることが示唆された。
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