1)現在の尺度試案における評定者間での評定不一致が、主に評価者を要因とした判断基準のズレによるものか、その他の誤差要因によるものかを、評定者を特定した二元配置のκと、これを特定しない一元配置のκの比較から検討した。この結果、評定の不安定さは、評定者の要因よりも、主にその他の誤差によるものであることが示された。また、誤差要因による評定の不一致が大きかった被評定者はいずれも、感覚障害あるいは認知症以外の精神科疾患をもつ人であったことから、被評定者の個人要因である合併症の有無が評定の信頼性に影響しやすいことが示された。この課題に対応するための評定マニュアル等のあり方を検討した。 2)本尺度は、各観察項目への反応として"通常は該当""通常は非該当"を意味する選択肢を両極とし、これに"中間"を意味するものを加えた3つから1つを選択させる方式をとっている。この"中間"にあたる選択肢の言い回しが評定者間信頼性に与える影響を検証するため、言語表現の異なる2種の選択肢セットについて、各選択肢のκ係数を比較した。結果、2つの選択肢セットによるκ係数の違いは小さいことが示された。 3)知的障害者支援施策が、居住型施設での支援から地域生活支援に移行しつつある現状において、現尺度の項目には地域生活者では観察が困難なものがあることが指摘されたため、この修正を行った。
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