研究概要 |
ワイル代数の左イデアルの理論で「ワイル閉包」という概念がある.ある左イデアルのワイル閉包とは,その古典的解空間を変えることなく最も微分方程式を増やしたものである.従って,左イデアルの古典的な解空間に注目するときの自然な概念で,多項式環のイデアルの理論での「イデアルの根基」に相当すると言えよう.A-超幾何系を定義する左イデアル(A-超幾何イデアル)のワイル閉包に関する先行する研究としてはMatusevichによるものがあり,パラメータが'very generic'ならA-超幾何イデアルのワイル閉包が自分自身に一致する(Weyl closedである)ことが示されている.その証明の過程でMatusevichは,A-超幾何級数がfully supportedであるという概念を定義し,パラメータがレゾナントでなく,さらにfully supportedなA-超幾何級数解を持てばA-超幾何イデアルはWeyl closedであることを示した.本年度の研究では,まず,Aが斉次のとき,パラメータがレゾナントでないという仮定を少し弱めた条件の下,fully supportedなA-超幾何級数解を持てばA-超幾何イデアルはWeyl closedであることをしめした.また,Aが斉次のとき,A-超幾何イデアルがWeyl closedならfully supportedなA-超幾何級数解を持つことも示した.従って問題となるのは,パラメータがレゾナントで上で掲げた「少し弱い条件」を満たさないときと,fully supportedなA-超幾何級数解を持たない場合である.これらの点に関してAが2行からなる行列の場合に詳しく計算した.
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