研究概要 |
本研究の目的は,いろいろなファイブレーションを利用して,3次元カラビ・ヤウ多様体のゼータ関数,L関数,形式群を調べることである。中でも,3次元デルサルト型多様体を詳しく考察する。 本研究の最終年度に当たる23年度は,カラビ・ヤウ多様体の形式群を調べてファイバー等との関係を分析することと,3次元カラビ・ヤウ多様体を数体上で考えてそのL関数とファイブレーションとの関係性を探ることを目標にした。研究協力者(海外共同研究者)である由井典子教授とカナダで2度の研究打合わせを行うことによって,次の研究成果を得た。 1. 3次元カラビ・ヤウ多様体のファイバーとなるK3曲面の形式群の高さを計算し,3次元カラビ・ヤウ多様体自身の形式群の高さとの関係を探った。決定的な関係性の特定には至らなかったが,数多くのデータを得ることができた。 2. これまでに得た3次元カラビ・ヤウ多様体のゼータ関数の情報を用いて,数体上(特に,有理数体上)定義された3次元カラビ・ヤウ多様体のL関数を計算した。 3. 上記2で求めたカラビ・ヤウ多様体のL関数とファイブレーションとの関係性を探った。普遍的な定式化には至らなかったが,幾つかの事例において関係性を具体的に記述することができた。 4. 3次元カラビ・ヤウ多様体のファイバーとして現れるK3曲面の特徴付けを行った。具体的には,そのようなK3曲面がnon-symplecticな対合を持つ場合に,Nikulin不変量を計算した。 以上の研究成果をもとに2件の論文を準備中である。特に,成果2~4に関しては,"The automorphy of Calabi-Yau threefolds with involution over Q"という論文の作成が最終段階に入った。また,上記の結果について3件の研究発表を行った。以上のことから,当初の目的は概ね達成できたものと考える。
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