研究概要 |
奥山・和田の共同研究[ Okuyama-Wada, Contemp. Math., 524, 2010]で,有限群Gとその指数が素数pと素な正規部分群Hにおいて, Gのp-ブロックBと, BによってcoverされるHの任意のp-ブロックbについて, Bとbのそれぞれのカルタン行列の最大固有値は一致することを証明した[ Okuyama-Wada, Theorem 1. 1].さらにProposition 3. 5で, Bに属する既約Brauer指標たちの次数に関するある条件(#)が成り立つならば, Bのカルタン行列の固有値の中にちょうどその(π)-partが不足群Dの位数に一致するようなものが存在することを証明した.条件(#)はp-可解群の任意のp-ブロックは常に満たしているが,一般の群では成り立たない. p> 3の時には(#)を満たさない群とブロックが存在する.しかしp=2, 3のときには,このような反例を見つけることはできなかった.そこでp=2のときに,対称群の2-ブロックについて既約Brauer指標の次数を計算するうち,対称群の任意の2-ブロックは常に条件(#)を満たしているようにみえた.さらに強く,清田・奥山・和田の共同研究[ Kiyota-Okuyama-Wada, accepted]により,任意の対称群において,任意の2-ブロックには高さ0の既約Brauer指標はただ一つしかないことを証明した.これはFong, Jamesにより知られていた,対称群において奇数次数の既約2-Brauer指標は自明な指標しかないという定理の一般化である.この結果は今まで全く知られていなかった事実である.カルタン行列の固有値を考えていなければ,この衝撃的な事実を発見できなかったであろう.
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