研究概要 |
自ら新たに導入した多項式「ブラウアー・シューア函数」に関しては,KP方程式系やその被約版,さらにはアフィンリー環の表現論でも一定の役割を果たすことが確認されつつある.以前,中国天津での国際会議で講演したことをまとめて「ブラウアーシューア函数に関するノート」と題する短い論文を出版した. これとは別の話題もある.ずいぶん前に出版されて,ヘッケ環の表現論と結晶基底を結びつけたLascouxたちの,いわゆるLLTについて,その最後に載っている数表をもとに実験的な計算をしてみたところ,面白い現象に気が付いた.組合せ論的な議論だけでも十分出版の価値があると考え,大学院生の安東雅訓,同僚の鈴木武史と論文を準備した.少し詳しく述べれば,アフィンリー環のシャポヴァロフ形式の行列式を組合せ論的に表示することに成功したことになる.この行列は岩堀・ヘッケ環のカルタン行列に対応しており,行列式はその重要な不変量である.さらにはその行列の単因子に関して気が付いた現象(論文には「予想」と書いた)がある.その本質的な意味,証明については現在の最重要課題である.いわゆるKhovanov-Lauda-Rouquierの次数付きヘッケ環の表現論との関係も徐々にわかって来ており,新しい世界が拓けるような予感がする.
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