本研究の目的は、特殊元を系統的に利用することによって、代数体やAbel多様体に対する岩澤加群の構造を具体的に調査することである。特に、一般Greenberg予想と呼ばれるある種の擬有限性予想やCohen-Lenstraタイプの出現割合の予想について、成立理由を明らかにすることを目標としている。 本年は、p<600の範囲でp円分体のイデアル類群の3-部分の構造について、計算機を用いて調査した。これまでの計算では拡大次数が3で割れない場合を主に扱っていたが、3で割れる場合についても市村氏(茨城大学)と共同で開発した円単数とp進L関数を用いる方法が有効であることを実際に確認できた。なお、この計算結果と中島氏(学習院大学)による計算結果を合わせることにより、p円分体の多くのAbel拡大体の素数3に対する岩澤不変量が具体的に決定されることになる。さらに、特殊元を用いたアルゴリズムおよび計算機を利用して、導手が比較的小さな実アーベル体であって大きな素数に対する岩澤加群が非自明になる実例を、継続的に探索している。その結果、24万を超える素数に対する非自明な実例が得られ、実際の出現個数が予想の値と非常に近いことが確認された。
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