研究概要 |
本研究の目的は、特殊元を系統的に利用することにより、代数体やAbel多様体に対する岩澤加群の構造を具体的に調査することであった。特に、Greenberg予想と呼ばれるある種の有限性予想やCohen-Lenstraタイプの出現割合の予想について、数値実験に基づいて成立理由を明らかにすることを目標とした。 継続的な数値実験による調査対象としては、有理数体および200以下の判別式 Dの二次体に 1 の原始 p 乗根を添加した円分体を選択し、これらの体の岩澤λp不変量およびνp不変量が例外的に大きくなる場合に注目した。研究期間中の計算により、有理数体および D<200 の 122 個の二次体に対しては p<300,000まで、有理数体および D<10 の 6 個の二次体に対しては p<6,000,000 までの調査が進んだ。実部分体において大きな素数に対してν不変量が1より大きくなるような例は少数ではあったが、予測値に近い実例が出現することが確認された。この実験結果は、古典的な Kummer-Vandiver 予想に密接に関わるものと考えている。なお、この調査において必要となるのが、円単数、p進L関数、Gauss和などの特殊元および素数であり、それぞれの元が相互に関連付けられて有効に利用された。さらに、tame な分岐をする p 次拡大が正規整数底を必ず持つ虚二次体の決定問題、ある種の無限個の円分体に対する岩澤不変量の決定問題においても、手法は異なるものの特殊元が有効に利用されて解決された。
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