研究概要 |
筆者は,アラケロフ幾何学における計量つきベクトル束の数論的特性類の理論を高次化することを目標に研究を行っている.本年度の前半は,iterated doubleとよばれる既約でない代数多様体(球面の代数幾何における類似物)上の,計量つきベクトル束に付随する代数サイクルについて研究した.そして,iterated doubleの算術的K群から高次算術的チャウ群への写像を構成した.これと前年度に得られたiterated double上の計量つきベクトル束のチャーン形式の理論を合わせることにより,上述の目標を達成した.そしてその結果を,2010年9月に京都大学で行われたアラケロフ幾何学の研究集会で発表した.この結果の証明は非常に難解で長大なものなので,本年度全体を通じて,論文の作成やその証明の推敲に時間を費やした また本年度の後半は,筆者がBurgosとFeliuとの共著論文の中で構成した,代数サイクル上の積分の研究を行った.これについては,数年前に筆者はいくつかの計算を実行していて,BlochとKrizにより構成された特別な代数サイクルの上でWang's Formと呼ばれる微分形式を積分することにより,多重対数関数が現れるという結果を得ていた.しかし当時は,その結果とレギュレーター写像との関係がどうなっているのかは分からなかった.ところが,前年度に得られたBurgosとFeliuとの共同研究の成果のおかげで,その計算がレギュレーター写像と多重対数関数の間の新しい関係を示していることが明らかになった.またその結果を用いて,多重対数関数と代数サイクルのいくつかの未解決問題を解決することができた.この結果については,すでに論文を作成済みである
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