第一段階であったランク1ユニタリ群のテータ対応については前年度に大筋で解決したため、今年度からはその応用に重点を移している。まずアルキメデス的な場合のユニタリ群のテータ対応についてのPrasad予想を解決するため、Voganによる明示的Langlands対応とendoscopyによるLanglands対応を計算し、相互の関係を決定した。非アルキメデス局所理論や大域理論ではテータ対応の記述に用いる局所Langlands対応が未だ整備されていない。そこでその際に用いられるArthur-Selberg跡公式およびそのendoscopyを用いた安定化のプロセスについて、勉強会や計算を進め、その一部について整数論サマースクール「Arthur-Selberg跡公式入門」で連続講義を行った。 一方、得られた2変数ユニタリ群のテータ対応は土井・長沼リフトなど、楕円保型形式のリフトの自然な拡張や精密化とも見なされる。従ってそれらのリフトを用いたL関数の(微分)値の研究(Gross-Zagier公式など)や、Siege1保型形式の構成などに幅広い応用が期待される。今年度は特にSiegel保型形式やそのJacquet-Langlands対応の構成への応用について考察を進めた。特にSp(2)に関連する群のWeil表現とユニタリ群のそれの間の関係を明らかにしたが、これを用いて吉田リフトなどの古典的リフトの拡張や精密化を図ることは来年度の課題としたい。この際にも跡公式の比較によるSp(2)やその内部形式上の保型形式の記述が必要だが、これについても計算を始めている。
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