研究概要 |
当該研究では,二つのユニタリ群の保型形式の間のテータ級数を積分核とする積分変換であるテータリフトの明示的記述およびその整数論的な応用を目標としている. 第一にこれまで整数論への応用に適した記述のなかった実ユニタリ群の間の局所テータ対応の記述を進めている.表現のVoganのLanglands分類による局所テータ対応の記述はすでに得ており,これをLanglads,Shelstadの内視論で書き下すことを目指した.具体的には表現の内視論的分類の基盤となる軌道積分のtransferとそれに基づく内視論的指標等式を得る必要があり,これをほぼ完成した.現在論文を作成中である.これは同時にユニタリ群の局所テータ対応にたいするPrasad予想を実ユニタリ群の場合に解決すると期待される. 非アルキメデス局所体上のユニタリ群の間の局所テータ対応を一般に決定する問題については依然,道筋も見えていない.そこですでに決定した1変数ユニタリ群の間のテータ対応の応用を追求している。具体的には1980年代から盛んに行われた,テータ対応による種数2のSiegel保型形式や四元ユニタリ群上の保型形式の構成の精密化を目指している.この種の応用は以前から考察していたが,古典群上の保型表現の内視論的分類を進めるJ.Arthurのプロジェクトが完成の段階に入り,今年度初頭から発表され始めたことにより,現実的なものとなった.現在のところ不分岐局所理論の計算ができた段階だが来年度中には完成を目指したい.
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今後の研究の推進方策 |
実ユニタリ群のテータ対応の内視論的分類による記述を用いてPrasad予想を精密に定式化し,証明する.それを用いてユニタリ群上の保型形式に付随するL関数の値へのPrasad予想の帰結を解明する. また今年度得られたユニタリ群のテータ対応の新たな定式化を反映してランク1ユニタリ群のテータ対応の記述を書く.応用として4変数ユニタリ群上の保型形式や,Siegel保型形式の構成,特に吉田リフト,荒川リフトの記述を統一的に行う. 最終年度であるので成果の発表を進める.
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