この研究では低次のユニタリ群の保型表現をテータ対応を用いて記述することを目標としていた.特殊直交群やシンプレクティック群などの古典群の保型表現についてはArthurによるendoscopic classificationが完成しており,そのユニタリ群での類似もC.P. Mokにより確立されつつある.我々の目標はこの分類とテータ対応の関係を明らかにすることであるが,今年度はまずアルキメデス局所理論を考察した. 局所大域原理の記述のみを目的とするendoscopic classificationと違い,テータ対応や周期の研究には個々の既約表現にラベル付けが必要となる.その基盤となる保型内視論の補助データを固定し,実ユニタリ群とその内視群の間の移行因子を決定した.さらにそれを用いた実ユニタリ群の既約二乗可積分表現の内視リフトを明示的に記述した.これらは抽象的には1980年台にShelstadが証明していることであるが,テータ対応への応用には種々の補助データを用いた明示的な記述が必要で,それは彼らの結果に含まれない. 年度の終盤はseesaw dual pairに応用するために,低次の直交群とシンプレクティック群の間の局所テータ対応のendoscopic classificationによる計算を進めた.こちらは現在進行中であり,次の研究課題につながっている.
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