研究概要 |
本年度に得られた結果は主に以下のとおりである。 (1)群Aが群Gに作用するとき、AからGへの斜準同型全体の集合をここではZ(A,G)と書くことにする。Z(A,G)はAが巡回群の場合には群上のある方程式の解と一対一に対応する。ある方程式の解の指標値の和が代数的数であるというHallの定理の別証明を斜準同型を用いて与えた。また、Aが一般の群に対してHallの結果を斜準同型を用いて拡張した。さらに、この結果からAが剰余群が巡回群になるような正規部分群をもつとき、Z(A,G)の個数に関してある合同式が成立することを示した。証明では、Brauerによる群の元に関する同値関係を斜準同型の集合上に拡張したものを構成し、それを用いた。この方法は群の方程式の解を考察する際に有効に用いることができると思われる。 (2)有限単純群は2元で生成されることが知られている。ここではもう少し条件を強くして位数が1,2ではないどの元もある共役と2元で群を生成するという状況を考える。どのような群がこの条件を満たしているかという分類を行った。いくつかの例外を除いてこのような事は単純群でしか成り立たない。さらに分類結果から、多くのLie型の群や交代群など無限系列の群ではこの性質を満たす群はあまり存在しないのに対して多くの散在型単純群がこの性質を満たしているということが分かった。2元で生成する群を考察するということは2変数方程式の問題と密接に関係している。なぜ散在型単純群の多くがこの条件を満たすのかについては今後の研究課題となるが、この研究は散在型単純群を特徴づける良い手がかりの一つと期待できる。
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