本年度の目標の一つであったベルヌイ数とその多項式の性状に関して、母関数の導関数の特性を利用することにより高位漸化関係と多重合成積の一般公式を開発することができた。これらの公式はベルヌイ数の分子のp-整除性を議論する上で大変有効であり、また非正則対(非正則素数とベルヌイ数の添数の組)とその分布状態を観測するのに役立つ。ここで用いた手法は、第1種および2種のスターリング数にも応用することができ、それらの数を成分にもつヘッセンベルグ型行列式を計算して、様々な特性を記述することができた。一方で、基本区間におけるベルヌイ数の分子のp-整除個数である非正則指数についても研究を進め、Skulaの評価式を僅かではあるが改良することができた。しかしこの成果は、Siegel予想の解明からは遠く離れている。 円分体の相対類数と非正則素数の高速計算に関して、新しいアルゴリズムの開発を試みてきた。ごく最近、Buhler達のグループにより非正則素数が1億6千まで計算され、これまでの記録が大幅に更新された。ここで用いられている高速フーリエ変換について、様々な側面からその改良を試みたが、走行時間に関して期待していた成果は得られなかった。他方、得られた数値データを観察しながら、実2次体の類数と単数に関するA-A-C予想についての研究も行った。これについては、素数pの平方根の連分数展開を用いた従来の手法の改良のみならず、ボロノイ型合同式から出発したフェルマー商を含む判定法を開発し、一定の成果を上げることができた。しかしその中で、符号係数を評価するために平方剰余と非剰余の分布状態を解明する必要があるが、それについては現在も継続して研究中である。
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