研究概要 |
代数体のガロワ拡大K/kにおける単数群のガロワコホモロジー群は基本的な数論的対象である.例えばK/kが不分岐拡大の場合,1,2次元コホモロジーは其々K/kにおけるイデアル類群のcapitulation kernelとcapitulation cokernelと同型になっている.一方,代数体の不分岐ガロワ拡大におけるcapitulation kernelがどのようなアーベル群になるかという問題は古典的な重要問題であり,これについては,Hilbertの定理94やFurtwaenglerの単項化定理という古典的結果や,これらの一般化である鈴木の単項化定理が知られている.これらの結果を踏まえて,GruenbergとWeissは一連の論文で次のような問題を考察した: 「Gを有限群とする.このとき代数体の不分岐G-拡大に於けるcapitulation kernelとしてどのようなアーベル群が現れるか? 正確に言えば,K/kが代数体の不分岐G-拡大全体を動くときのK/kにおける単数群の1次元コホモロジーの同型類全体のなす集合X_1(G)を決定せよ.」 GruenbergとWeissはこの問題の群論版については十分満足すべき解答を与えたが,元々の問題を解決するためには,与えられた群論的状況を実現する不分岐拡大の存在問題が解決されなければならない. 私は従前研究に於いてこの存在問題をGが有限p-群の場合に解決しているので,この場合にはGruenbergとWeissの結果と合わせてX_1(G)を決定することができる.さらにGが有限p-群の場合に,K/kが代数体の不分岐G-拡大全体を動くときのK/kにおけるi次元コホモロジー群の同型類全体のなす集合X_i(G)をi=0,2,4の場合にも完全に決定することに成功した.
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