楕円曲線とその高次元化でるアーベルのガロワ埋め込みの研究を行った。まず、楕円曲線を3次元射影空間に双正則に埋め込んだとき、群はクラインの四元群か巡回群になることは容易に分かる。しかも後者はJ不変量が1728のときのみに起こる。すべてのガロワ直線を求めて、それらの配置まで決定することは未解決であった。得られた結果は、どのような楕円曲線を3次元射影空間に埋め込んでも、必ず6本のガロワ直線を持ち、それらの配置は四面体の辺となることである。なお、J不変量が1728のときは、更に8本のガロワ直線があり、合計14本になり、その配置も解明した。この定理の系として、平面4次曲線で種数が1のものはガロワ点は高々1個しかないことも得られた。これは3次元射影空間の曲線を平面に射影した4次曲線と双有理同値ということを用いてわかる。その成果はAlgebra Colloquiumに発表されることが決定している。この研究に引き続き、アーベル曲面のガロワ埋め込みの研究のうち、最小ガロワ埋め込みの次元を決定した。すなわち、一般にアーベル曲面Aがn次元の射影空間内に存在するときはnは4以上であるが、ガロワ部分空間をもったとすると、nは7以上であり、ちょうど7のときのAの構造まで決定した。特に、楕円曲線の直積や種数2の曲線のヤコビアンを用いて具体例を沢山作った。これらにより、アーベル曲面の新たな性質が明らかになった。これらの成果はRend. Mat. Semi. Padovaに掲載決定している。
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