代数曲面のガロワ埋め込みの研究のうち、アーベル曲面の最小ガロワ埋め込みの研究を行い、また曲面のガロワ埋め込みの研究の基礎となる、種数1の曲線のガロワ点のガロワ群の研究を行った。また、それらとも関係のある、単尖点有理曲線がガロワ点を持つ必要十分条件を決定した。それらの詳細は以下の通りである: アーベル曲面が射影空間に埋め込まれる、空間の最小の次元は4であることはよく知られている。ここでは、更にその射影空間がガロワ部分空間を持つような場合の最小次元はいくつであるか、という問題を考察した。結果は7であることが判明して、しかもそのような曲面をすべて決定した。この結果はアーベル曲面の多くの歴史的結果に一石を投じたと言えるかと思う。種数1の曲線の平面曲線で特異点を持たないときは3次曲線であるが、この場合のガロワ点の決定は易しいが、特異点を持つときは複雑になる。これは楕円曲線の多様体としての自己同型群を決定する問題と深く関わっている。すなわち、ゼロを固定するものばかりでなく、平行移動も含めた、有限自己同型群を決定する問題である。それらをすべて決定し、またそれらのうちガロワ点のガロワ群として現れるものもすべて決定した。更に、ガロワ群が可換のとき位数は9以下であり、それらの群を与える定義方程式まで求めた。種数1の曲線は数論等では非特異の場合に扱われるが、特異点を許す場合にも研究対象になることを示したのは、一定の成果でないかと思われる。一般に平面曲線が特異点を持つとき、そのガロワ点とガロワ群を決定することは極めて困難であるが、有理曲線で特異点として尖点だけもつものについては比較的簡単に決定できた。これにより、特異点を持つ場合のガロワ点の研究の端緒が開けること期待したい。
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