研究概要 |
本年度は、設定した研究を推進する過程で新たな研究対象として導入したA^1-patchについて主に研究を行った。これは可換環R上の多元環Aであって、正則列x,yが存在して、A_x、A_yがそれぞれ基礎環R_x、R_y上の1変数多項式環であり、かつA=A_x∩A_yをみたすようなもののことである。もっとも基本的なのは、Rが体k上のn変数多項式環で、x,yがその変数(の一部)となっているときである。このような多元環は、多項式環上に作用する局所有限導分の定数環の有限生成性と密接な関連があり、その観点からはnが3以上の場合が重要になるが、本年度は手始めとしてn=2の場合について考察した。そして、この場合には次の主定理に示すように、完全な結果が得られた。 定理RがUFDで、(x,y)RがRの極大イデアルのとき、AがR上のx,yに関するA^1-patchなら、Aの構造に関して、次の3つの場合のいずれかが成り立つ。 (1)A=R[U] (2)A=R[U,V]/(y^nU-x^mV-f)ここに、m,nは自然数で、fは(x,y,f)R=RをみたすRの元である。 (3)A=R[U,V,T]/(yT-x^mV-f,x^pT-y^nU-g)ここに、m,n,pは自然数で、f,gはRの元であり、(x,y,f)R=Rをみたし、gは(x^p,y^n)Rに属さない。 これら3つの場合は互いに排他的である。すなわち、この3つのうち、ただ1つの場合のみが起こる。 以上が主定理であるが、さらに、ここでは述べないが、この定理の応用もいくつか得ることができた。これらの研究成果については、現在論文を執筆中である。
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