まず、群Gからの作用を持つ小圏(G圏と略称)の間にうまく1-射を定義し、その1-射の間にうまく2-射を定義して2-圏G-Catを定義した。次に、G次数付き小圏の間にうまく1-射を定義し、その1-射の間にうまく2-射を定義して2-圏G-GrCatを定義した。これらの定義のもとでさらに、軌道圏を取る操作(CからC/G)をうまく2-関手G-Cat→G-GrCatに拡張し、スマッシュ積を取る操作(BからB#G)をうまく2-関手G-GrCat→G-Catに拡張することによって、これらが互いに弱擬逆であるようにすることができた。強い意味では、軌道圏を取る操作は、スマッシュ積をとる操作の2-左随伴になっているだけであることに注意する。これにより、昨年度の結果(単なる圏としての擬逆)を完全に拡張することができた。その際のキーポイントは、2-圏G-GrCatの1-射の定義の条件を昨年度のものよりも緩めたことにある。この結果は、Cohen-Montgomery双対性の2-圏論的拡張となっている。群Gを一般の小圏Iに取り替え、G作用の代わりに関手X:I→k-Catを考える(kは可換環でk-Catはk線型圏のたす2-圏)と、軌道圏を取る操作はグロタンディーク構成Gr(X)をとる操作に一般化される。この設定のもとで、Xともうひとつの関手X';I→k-Catとの間の導来同値性を定義し、XとX'の間の導来同値がGr(X)とGr(X')の間の導来同値を導くことを証明した。応用としてこのことから直ちに、k多元環AとBが導来同値であるれば、任意の半順序集合Sと群Gに対して、incidence多元環ASとBSが導来同値になり、群多元環AGとBGが導来同値になることが導かれる。
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