研究概要 |
(1)テンソル圏における有限次元射の理論についてPedro Luis del Angel教授と共同研究していたものが出版に至った。これまでテンソル圏の対象に対して有限次元性の理論を作ってきたが、次の意味で射の拡張された。 (i)対象が有限次元的となるための必要十分条件は、その対象の恒等射が有限次元射となることである。 (ii)有限次元射と任意の射との合成は、有限次元射になる。 (iii)X,Yを代数多様体とするとき、XとYの積のDivisorをChow Motives h(X)からh(Y)への射と見なすと有限次元射となる。 これらの性質によって、より広い範囲のモチーフに対して有限次元性が容易に証明できるようになった。 (2)Murre教授との共同研究も、出版に至った。Murre教授は代数多様体Xに対し,そのPicard Motiveを定義したが、その構成には人工的なステップが含まれていたため、Picard Functorがある種のUniversalityを持てば、どのような構成方法を使っても必然的に同型なものができることを示す、というのがこの研究の目標であった。難所は、Xが代数曲線の場合ですらh(X)のsubmotiveとしてPic(X)は一意ではなく、Universalityをどう特徴づけるか、ということにあった。我々はsubmotivesの自然同型という概念を使うことによってこの困難を乗り越えた。議論の中で有限次元性の仮定を使うので、Picard motiveとAlbanese Motiveについてのみの証明となったが、Murre-Grothendieckの標準予想で予想された全てのモチーフの分解に対して、そのモチーフのコホモロジー群を固定すれば、submotiveが自然同型を除いて一意であることが示された。
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