研究概要 |
研究実施期間初年度に当たる平成21年度は,今後3年間における研究基礎期間と位置づけ,様々な型を持つ比較可能系正則環のうち「Almost比較可能性をみたす正則環」に焦点を絞り,この環に関する「有限性問題・行列環問題・射影加群削除問題・環の構成法等」の解明に取り組み,次の研究結果を得た。まず最初に,「Almost比較可能性をみたす正則環上の可算生成射影加群全体の集まりは再びAlmost比較可能性をみたす」ことを証明し,有限生成射影加群よりもより一般的な射影加群におけるAlmost比較可能性成立という結果を与えた。筆者はこれまでに自身の学術論文において,この型の新たな環を構成する上で重要な役割を担う「Almost比較可能性をみたす正則環上の有限生成射影加群全体の集まりは再びAlmost比較可能性をみたす」という事実を証明していたが,今回得られた成果はこの結果を包括的に含むものである。更に,その結果を用いて,「Almost比較可能性をみたす正則環上の有限生成射影加群全体の集まり,並びに,directly finite射影加群全体の集まりは,共にAlmost比較可能性に関する狭義幕削除性を満たす」を証明した。これは,筆者がこの科研における研究課題として提起した「射影加群の直和に関する削除問題」に対し肯定的解答を得たことを意味する。今回得られた結果は,Almost比較可能性をみたす正則環に関する最新成果として,今年度10月に開催された「第42回環論および表現論シンポジウム」で,証明方針を含め講演発表を行った。詳細は,論文誌「Proceedings of the 42nd Symposium on Ring Theory and Representation Theory」及び「環論ホームページ」の中で公表した。
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