研究概要 |
代数的手法とトロピカル幾何学を基礎としながら,応用分野の解析を進めた. 5月から大阪大学の植田一石氏らとの共同研究として,14個の例外型ユニモダル特異点に対応するK3曲面の導来圏の研究を開始した.その結果,特異点解消に対応してミルナーファイバーのコンパクト化に現れる無限遠重み付き射影直線(これは比較的単純な対象である)から自然に誘導される球面的対象系を構成し,標準的に構成されるコクセター・ディンキン図形が幾何的に代数的サイクルから構成されるものと同じになることを示すことができた.この内容は,研究実施計画通り,3月にダラット(ベトナム)における日越特異点研究集会で発表し,すでに論文として出版されている(現在のところオンラインであり何れ冊子体で刊行される). 真瀬真樹子氏との重み付き射影超曲面と双有理になる95個のK3曲面族の類別の論文については,論文掲載受理の報告を受けた. トロピカル幾何を工程計画問題に応用して,クリティカルパスの遷移を可視化するという,全く新しい手法を,首都大学東京の小田切真輔氏との共同研究で開発した.この内容については,12月にカストロ・ウルディアレス(スペイン)におけるトロピカル幾何の研究集会で,ポスター発表を行った.これは現在論文を投稿中である. また,7月に東京大学玉原国際セミナーハウスにおいて,代数多様体の極小モデル理論の解析的手法と代数的手法の対比をテーマとした勉強会を共催し,情報収集を行った. 付値や順序加群に付随した代数幾何の基礎付けに関する着想を得て,研究に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
付値や順序加群に付随した代数幾何の基礎付けに関しては着想段階である一方で,流通の研究から派生したトロピカル幾何の工学への応用が見出されるという当初思いもよらなかった研究ができたことは特筆に値するであろう.また,K3曲面と特異点に関する論文がいくつか出版され,研究全体としては順調に推移しているものと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
付値や順序加群に付随した代数幾何の基礎付けに関しては,さらに研究を進め,著作の出版を準備する. 工程計画問題に対するトロピカル幾何の応用については,工学系の学会における研究発表や議論を行い,さらに大きく発展させる計画である. K3曲面についての共同研究も引き続き進める計画である.
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