制御理論,特に工程計画問題の分野に初めて幾何学的視点を導入し,クリティカルパスの変化がトロピカル超曲面で起こることを見出し,クリティカルパスの遷移を幾何的に表し可視化する全く新しい手法を開発していた.前年度の結果を更に拡充し,さらに,複雑なネットワークをクリティカルパスの構造の情報を失わずに簡略化する手法も見出した.これらの研究は小田切真輔氏(首都大学東京)との共同研究として,計測自動制御学会での招待講演と,審査付き学会発表を行った.これは数学と工学の新たな交流の始まりであり,極めて意義深い.また,北海道大学・埼玉大学・高知大学等の数学の研究集会でも研究発表を行った. トロピカル平面曲線,特に楕円曲線のトロピカル版の位相分類を行った.通常の複素代数多様体では楕円曲線の位相同型類はトーラスただ一つであるが,トロピカル多様体においては,100種類以上の位相同型類が存在することがわかった.その中には,平面3次曲線としては実現不可能なものも存在し,トロピカル多様体の双有理幾何への問題を拓いている. 6月に東京大学玉原国際セミナーハウスにおいて,分類理論における正標数の手法のテーマに勉強会を共催した(参加者は約20名).このテーマはその後急速に発展し,平成25年度も同じテーマで最新の知見を得るための勉強会を行うことになっている.その他,日本数学会の代数学分科会シンポジウム・城崎代数幾何シンポジウム等にも出席して,情報収集に努めた.
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