当年度の研究の目的は、有限体上定義された代数曲線上のベクトル束から定まる符号の次元、最小距離などのパラメーターを決定することであった。曲線上のα型弱安定ベクトル束の存在は、最小距離の評価のために重要である。既に22年度の研究に於いて曲線間の有限射を用いてα型弱安定ベクトル束を構成する方法を得ることには成功していたが、この方法では階数が写像の次数の倍数になるベクトル束しか構成できない為、今年度ではα型弱安定ベクトル束の新しい構成法の研究を行い、以下の様な結果を得た。 第一の結果は、有限体上定義された代数曲面上の安定ベクトル束と、その上の曲線上のα型安定束との関係を解明したことである。A.LangerはBogomlov型不等式を応用することによって正標数での安定ベクトル束の制限定理を証明していたが、我々はこの結果をα型安定ベクトル束の場合にまで拡張することに成功した。より詳しく述べると、我々は代数曲面上の安定ベクトル束を十分高い次数の曲線に制限することによってα型弱安定ベクトル束が得られることを証明した。この結果によって曲面上の安定束の存在から曲線上のα型安定束の存在が導かれることがわかる。 第二の結果として、有限体上定義された射影平面上で、与えられた階数とチャーン類を持つα型安定束が存在するための十分条件を得ることができた。この結果は、射影平面上の任意階数の安定束の存在を示すことによって証明される。特に、Hermite曲線の場合にはパラメーターの評価式を求めることに成功した。この結果を用いて平面曲線上の列から漸近的に良い性質を持つベクトル束符号の存在を証明できると期待される。
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