研究課題/領域番号 |
21540059
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
古畑 仁 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80282036)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 統計多様体 / 部分多様体 / ヘッセ多様体 / 統計はめ込み |
研究概要 |
定曲率空間内の統計部分多様体論の構築に関連して,つぎの成果を得た.ねじれのないアファイン接続とリーマン計量の組でコダッチ方程式をみたすものを統計構造とよび,それをもつ多様体を統計多様体とよぶ.ヘッセ多様体間の写像が統計はめ込みであるとは,ヘッセ多様体を自然に統計多様体とみなすとき,その統計構造を保存するものをさす.ヘッセ多様体に対して,自分自身への微分同相な統計はめ込みを自己同型とよぶ. ヘッセ断面曲率が消えるヘッセ多様体の標準的なモデルをここでは平坦空間とよぶ.2次元平坦空間から3次元平坦空間への柱状統計はめ込みについて,前年度の研究により生成曲線のみたすべき常微分方程式が導出され,その具体例が構成されていた.本年度はそれを進展させ,得られていた具体例がすべてを尽くしていることを証明した.また,平坦空間の自己同型群を決定した.一方,ヘッセ断面曲率が正で一定のヘッセ多様体のうち,標準的かつ重要なあるモデルをここではたんに正の定曲率空間とよぶ.これは2次元の場合には,正規分布全体のなす空間から構成される統計多様体と一致するものである.この正の定曲率空間の自己同型群を決定した.研究目標であるヘッセ断面曲率が正で一定のヘッセ多様体の分類問題はいまだ完全な解答を得られていないが,正の定曲率空間の特徴づけについて,上記の結果を今後有効に役立てることが可能であると予想される. また,本年度も本研究の成果報告および情報交換の場であるミニワークショップ「統計多様体の幾何学とその周辺」(4)を北海道大学で3月に開催した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画を遂行する際に顕在化した新たな興味深い課題に対しては一定の成果を得た.しかしながら,目標であるヘッセ断面曲率が正で一定のヘッセ多様体の分類そのものの困難さを回避するには至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
ヘッセ多様体としての定曲率空間の間の統計はめ込みの構成と分類の研究を中心に行う. 次年度も継続して研究集会を開催し,連携研究者との情報交換および成果報告のために活用する.この研究集会は,幅広い分野の研究者および将来の研究者がこの分野に参画しやすくなるように工夫する.
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