研究概要 |
当該年度では,ポアソン核に関するフィシャー情報幾何学について前年度の考察の継続という形で精力的に研究を進めた. 研究目標1についてTokyo J.Math.掲載論文においてダメックーリッチ空間のポアソン核が体積エントロピーとビューズマン関数によって完全に表示できるという結果を著した.これによってアダマール多様体としてのダメックーリッチ空間から理想境界上の確率測度の空間へのポアソン核写像が定義され、その写像がフィジャー情報計量に関して調和かつ相似的であることが具体的に明らかにされた。 目標2では,調和かつ相似的ポアソン核写像を許容するアダマール多様体の幾何学的研究結果、すなわちそのようなアダマール多様体は漸近調和的かつ可視的であらねばならないという結果を,Diffrential Geometry and its Applications,2010国際会議(チェコ・ブルノ市開催)にて報告し,参加者と研究討論を行った.報告はDGA2010 Proceedingsとして次年度に出版予定中.またギリシャエーゲ海幾何学サマースクールに参加し,目標2の研究に関連した貴重なアドバイスをもらい、研究が進展中で、次年度にまとめたい.モデル空間に関する剛性が大きな意味をもつというアドバイスであった. 加えて,当初の研究実施計画に課題としてあげたビューズマン関数のレベル超曲面であるホロ球の幾何学について最近進展があったので,現在結果をまとめている.次年度各方面で報告したい.一つは,ホロ球の主曲率の個数が,3個以上でかつ定数でないダメックーリッチ空間の存在を示すことができたこと,また測地流のアノソフ性に効力を発揮した安定ヤコビテンソルをわれわれの研究に役立てることに成功した.特筆すべき結果をいくつかあげる. 定理:ホロ球がすべて全測地的(主曲率 一定)であるアダマール多様体は空間形でなければならない. 定理:またすべてのホロ球について構造ベクトルが主曲率一定の主方向であるケーラー・アダマール多様体は複素空間形である.
|