研究概要 |
1980年代後半,研究代表者は2次元単位球面上の閉曲線対から3次元単位球面内の平坦トーラスを構成する方法を開発した.この構成法により,現在までに,3次元単位球面内の平坦トーラスに関する興味深い研究成果が数多く、得られている.本研究では,3次元単位球面内の平坦トーラスに関するこれまでの研究をさらに発展させるため,この分野における重要な未解決問題の解決を目指す. 平成21年度は,特に,直径予想「3次元単位球面内に等長的にはめ込まれた平坦トーラスの外的直径は円周率に等しい」を解決するための研究を連携研究者とともに推進した.主な研究成果は以下の通りである. 1.上記の構成法を応用し,直径予想が2重接触予想「2次元単位球面上のある種の閉曲線対(periodic admissible pairとよばれる)は第2種の2重接触を許容する」と同値であることを証明した. 2.ある条件の下で2重接触予想を解決した.すなわち,periodic admissible pairの二つの測地曲率の積が-1より小さいという条件を満たせば2重接触予想が正しいことを証明した. 3.上記の結果を応用し,平坦トーラスの平均曲率が定符号ならば直径予想が正しいことを証明した. 4.さらに,直径予想に関するこれらの研究成果を応用することにより,3次元単位球面内のCliffordトーラスの剛性に関する問題を部分的に解決した.すなわち,3次元単位球面内に等長的にはめ込まれたCliffordトーラスは,もし平均曲率が定符号ならば,標準的に埋め込まれたCliffordトーラスと合同であることを証明した.
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