研究概要 |
1980年代後半,研究代表者は2次元単位球面上の閉曲線対から3次元単位球面内の平坦トーラスを構成する方法を開発した.この構成法により,現在までに,3次元単位球面内の平坦トーラスに関する興味深い研究成果が数多く得られている.本研究では,3次元単位球面内の平坦トーラスに関するこれまでの研究をさらに発展させるため,この分野における重要な未解決問題の解決を目指す. 平成22年度は,21年度の成果を基に,直径予想「3次元単位球面内に等長的にはめ込まれた平坦トーラスの外的直径は円周率に等しい」を解決するための研究を継続した.主な研究成果は以下の通りである. 1.前年度の成果を改良し,3次元単位球面内の平坦トーラスの平均曲率が「非負または非正」ならば直径予想が正しいことを証明した.さらに,この結果を応用することにより,3次元単位球面内に等長的にはめ込まれたCliffordトーラスは,もし平均曲率が非負または非正ならば,標準的に埋め込まれたCliffordトーラスと合同であることを証明した. 2.さらに,トーラスから3次元単位球面への平坦波面とよばれる写像について研究した.この写像は平坦トーラスから3次元単位球面への等長はめ込み写像の一般化である.この写像を2次元単位球面上の閉曲線対から構成する方法を開発し,この写像については,直径予想の反例が存在することを証明した. これらの研究成果は,平成22年度の国内および国外の研究集会で発表され,さらに,論文としてGeometriae Dedicataに掲載されることが決定した.
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