研究概要 |
前研究課題「共形幾何学とループ群による平均曲率一定曲面の構成の研究」(基盤研究(C),課題番号18540068)において,「3次元双曲空間内の平均曲率一定曲面の構成法」を構築した。 この構成法を接触幾何学とループ群論の双方の観点から改良する研究および構造の解明を行った。` Josef Dorfmeister氏・小林真平氏との共同研究を継続して行い,平均曲率の値が1未満の平均曲率一定曲面のガウス写像は接触幾何学的条件(ルジャンドル写像),リーマン幾何学的条件(調和写像),ループ群論的条件の3つを同時に充たすことを明らかにした。とくに極小曲面(平均曲率が0)の場合,ループ群論的条件は原始写像(primitive map)とよばれる条件と一致することを証明した。 さらにガウス写像の像空間である単位接ベクトル束にある種のf構造(偶数次元多様体上の概複素構造の奇数次元的類似)とよばれる幾何構造を導入すると,原始写像という条件がf構造に関する正則性条件(holomorphic map)と同値であることを証明した。 f構造を単位接ベクトル束に与えることにより,単位接ベクトル束を双曲空間に対するツイスター空間の類似とみなしうることが明らかになった。 この結果から,極小曲面のガウス写像は,もとの曲面(調和写像)のツイスター・リフトの類似と考えられる。したがって本研究における「極小曲面のループ群論的構成法」はこれまで偶数次元の像空間における「調和写像のツイスター理論」として研究されてきた理論の3次元における類似とみなせるという新たな知見を得た。この知見に基づき本研究における「極小曲面のループ群論的構成法」の高次元双曲空間内の極小曲面へ一般化するという新たな可能性が示唆された。 これらの成果はDorfmeister氏・小林氏との共著論文として発表する。
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