研究概要 |
前年度に引き続き,Josef Dorfmeister氏・小林真平氏との共同研究を行い、3次元双曲空間内の平均曲率が一定で1未満の曲面のループ群論的構成法の改良を行った。前年度に平均曲率が0(極小曲面)であることと、ガウス写像が単位接ベクトル束への原始写像(primitive map)であることが同値であることを証明した.この成果により,極小曲面の場合は,本研究課題で研究している曲面の構成法が、「奇数次元版のツイスター構成法」とよぶべき方法であることも得ていた。今年度は平均曲率が0でない場合の構成法の改良を行った。射影幾何学や共形幾何学で用いられる「双曲空間の光円錐模型」を用いて,平均曲率が1未満で0でない一定の曲面を,曲率が-1の双曲空間から、-1とは異なるある値の双曲空間内に極小曲面として移植させることにより、「ツイスター構成法」に帰着できることが証明できた。この発見は,本研究課題における「平均曲率が1未満で一定の曲面の構成法」の仕組みを微分幾何学的に説明するものであり、他の幾何学的問題への応用可能性を示唆する。今年度に改良されたループ群論的構成法は海外・国内の極小曲面研究者の関心を惹き、スペインで開催された国際研究集会及び日本数学会秋季総合分科会(幾何学分科会)において特別講演として成果発表を行った。 平均曲率一定曲面のループ群論的構成を数値解析的観点から理解するために、曲線及び曲面の離散化を行う事が有効である。この観点から平面曲線の離散化を梶原健司氏・松浦望氏・太田泰広氏と共同で研究し、離散化された平面曲線(差分平面曲線)のτ関数による具体的表現を与えた。とくに、ソリトン解および脈動解(ブリーザー解)とよばれる差分mKdV方程式の解から得られる差分平面曲線の離散運動を記述することに成功した。この成果は4人の共著論文として発表する。
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