研究概要 |
ねじれノビコフホモロジーの計算をこれまで考察していたタイプのヘガード分解で行おうとすると、ある条件を満たさねばならないことが判明した。この条件は、「空間内のあるループに対応する基本群の元の表現が自明になる」というものである。海外共同研究者であるナント大学教授アンドレイパジトゥノフ博士と連絡を取りながら、三次元球面内の結び目補空間でこの条件を満たす具体例を探したが、発見されるものは可換表現に対応するものばかりであり、'ねじれ'ノビコフホモロジーの本質を含むものは見つけられなかった。この条件がどの程度本質的なものなのか、三次元球面内でなく一般の多様体ならこの条件を満たす非可換表現が存在するのか、という問題が残った。 ジョンソン準同型を使い、ホモロジカルファイバー結び目がファイバー結び目からどの程度離れているかを表す尺度となる量J(K)を定義した。この量は2以上の自然数の値をとり、小さい程ファイバー結び目と離れていることを表す指標である。Kがファイバー結び目のときはJ(K)=∞となる。本年度の研究にて、ファイバー結び目でないにもかかわらずJ(K)=∞となるホモロジカルファイバー結び目が無限個存在することを証明した。さらに任意の自然数kに対して、J(K)=kとなる結び目が存在することも判明した。5月に国際研究集会「Knots,Contact Geometry and Floer Homology」を組織運営した。非常に実りの多い研究集会だったと評価している。さらに、上述の結果について、日本大学、大阪電気通信大学にて研究発表を行いレビューを受けた。
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