本研究の目標は、三次元球面内の双曲結び目に対する体積予想の完全な証明と、その応用として三次元多様体の変形理論、あるいはデーン手術理論に注目し、双曲構造の変形空間の無限遠点や、トーラス・カスプ上の最短測地線を求める方法などを開発することです。 体積予想の解決に向けた本年度の成果としては、ジュネーブ大学のカシャエフ氏との共同研究で、5交点結び目の体積予想の証明が完成したことと、京都大学の大槻氏との共同研究で、6交点結び目の体積予想の証明が完成したことで、現在のところ、どちらもプレプリントの形にこぎつけています。また、ツイスト結び目と呼ばれる双曲結び目の無限族に対して、ジョーンズ多項式の積分表示における主要部を鞍点法を用いて解析する方法を開発し、昨年5月に京都大学で開催された、「Intelligence of Low-dimensional Topology」にて招待講演を行いました。鞍点法の問題点をクリアしたこれらの結果は、体積予想の解決への大きな一歩となるでしょう。 さらに、体積予想の応用面では、トーラス・カスプの形を決める不変量を、体積予想の研究で登場するポテンシャル関数から簡単に求める方法を開発しました。これは、デーン手術理論への応用や、ジョーンズ多項式の高次の漸近展開に現れる量の幾何的な意味を解析するうえでも重要で、チャーン・サイモンズ不変量やライデマイスター・トーションなどへの応用を含め、今年8月にドイツの数学研究所で開催されるワークショップで発表する予定です。
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