研究代表者高倉は、第一に、重み付きのベクトル分配関数の漸近挙動を考察した。具体的には、BrionとVergneによる分配多面体の体積に対する明示公式を、重みが負の場合まで含めて成り立つ形に一般化した。昨年度まではその内容の一部は予想にとどまっていたが、今年度はその証明を厳密に与えることができた。詳細は、京都大学数理解析研究所の研究集会「変換群の幾何と組合せ論」において発表した。 第二に、リー群の余随伴軌道の直積への極大トーラスの作用を基にして、多重ウェイト多様体というシンプレクティック商のクラスを設定し、その位相不変量について考察した。具体的には、A型のリー群に限定して、商をとる位置に対応するパラメータがある特殊な小部屋に属すという仮定の下で、多重ウェイト多様体の体積の公式を与えた。その過程では、上記の第一の結果が用いられる。リー群の階数が低い場合には、この公式は非常に明示的なものになり、原理的にはこれからこの空間のホモロジカルな位相不変量がすべて求められる。この結果の一部は、第58回幾何学シンポジウムおよび第11回名古屋国際数学コンファレンス「Topology and Analysis on Foliations」で発表した。 なお、以上の内容は、交付申請書に「研究の目的」として記した「シンプレクティック商におけるよいクラスの設定」「各種の位相不変量を用いた大域的構造の解明」の重要な一例と位置づけられる。
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