平成21年度までに、コンパクト型対称空間内の等焦部分多様体を初期データにもつ平均曲率流の崩壊に関する定理を以下の方法で証明しました。ある無限次元ヒルベルト空間からそのコンパクト型対称空間へのあるリーマン沈め込みを考え、そのリーマン沈め込みによるその等焦部分多様体のリフトを考えます。そのリフトを初期データにもつ平均曲率流(これは存在する)の崩壊について調べ、その調べた結果を利用して、元の等焦部分多様体を初期データにもつ平均曲率流の崩壊に関する結果を得るという方法です。 本年度の主な研究成果は、無限次元ヒルベルトリー群の無限次元ヒルベルト空間上のある種の余等質有限の自由な等長作用を考え、その作用により不変な超曲面を初期データにもつ平均曲率流の研究を創始し、そのいくつかの基礎的事実を得たことです。ここで、この軌道写像はリーマン沈めこみであり、上述の無限次元ヒルベルト空間からコンパクト型対称空間へのリーマン沈め込みは、この種の軌道写像になっていることを注意させていただきます。また、この種の作用の軌道空間は、有限次元リーマン多様体であり、コンパクトリーマン等質空間はすべてこの種の作用の軌道空間であることを注意させていただきます。この作用により不変な超曲面を初期データにもつ平均曲率流の研究は、その軌道写像による像(これは、軌道空間内の超曲面である)を初期データにもつ平均曲率流の研究に適用することができます。それゆえ、この研究は、その軌道空間として生ずる有限次元リーマン多様体内の超曲面を初期データにもつ平均曲率流の研究を無限次元の線形空間へリフトして研究を行うためのものと解釈されるわけです。 平成23年度以降は、この研究をさらに、進展させると共に、余次元一般(ただし、有限)の部分多様体に対し一般化し、「コンパクト型対称空間内のある条件を満たす平坦な切断をもつ部分多様体を初期データとしてもつ平均曲率流があるより低い次元の部分多様体に崩壊すること」を、そのコンパクト型対称空間を軌道空間としてもつこの種の軌道写像を考え、それを通じて無限次元空間へのリフトをその研究を利用して調べることにより示す予定です。さらに、その崩壊先の部分多様体からの放射拡大を随時行うことによる体積保存のスケーリング付き平均曲率流が等焦部分多様体に収束することを同様な方法で示す予定です。
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