研究概要 |
Gを複素数体C上の連結かつ単連結な半単純リー群,Kをその極大コンパクト部分群とするときGのアフィン・グラスマン多様体Gr_Gは,K上の基点付きループ空間ΩKとホモトピー同値であることが知られており,したがって,トポロジーの手法を利用して,Gr-G=ΩKのホモロジーを調べることができる.G=SL(n,C),K=SU(n)の場合には,「k-シューア関数」を用いた記述が知られており,これは,n→∞の極限において,ΩSU(∞)のホモロジー環とZ上の対称関数のなす環Aとの自然なホップ代数としての同型を与える.この考え方をG=Sp(2n,C),K=Sp(n)の場合に推し進め,河野-小島の結果を利用することにより,ΩSp(∞)のホモロジー環とシューアP-関数のなす環との間に自然なホップ代数としての同型が存在することを示した.同様にして,Ω_0 SO(∞)(単位ループを含む連結成分)のホモロジー環とシューアQ-関数のなす環との間のホップ代数としての同型も示すことができる.本年度は,この考えをK-ホモロジー論へ適用し,ΩSp(∞)およびΩ_0 SO(∞)のK-ホモロジーのなすHopf代数の,対称関数環Aの部分環としての記述を与えることができた.したがって,この同型の下で,アフィン・グラスマン多様体の構造から幾何学的に定義されるシューベルト類には何らかの対称関数の族が対応しているはずである.そこで,成瀬弘氏(岡山大学)と協力し,Lam-PylyavskyyによるΩSU(∞)の場合の「双対安定Grothendieck多項式」の構成方法を参考にして,「逆平面分割」を用いた多項式の族を構成した.これらの結果は共同研究者である成瀬弘氏により研究集会「空間の代数的・幾何的モデルとその周辺」(2011年9月於 京都大学数理解析研究所)において発表された.
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