研究概要 |
通常,統計的な推測をする場合には,正規分布のような非有界な確率分布を用いて現実の事象を近似して推測を行うことが良く行われる.しかしながら,例えば年齢などの分布を考えると分かるように,非有界な確率分布は実際的でない事も多い.また,網を用いて魚を捕獲する場合において,網目の大きさに応じて捕獲される魚の大きさが決まるので,魚の大きさは有界な確率分布に従うと考えるのが自然である(これを網目選択性という). 従来の推定理論における情報不等式は,正則条件を課して考察され,推定方式の有効性を測る手段として用いられてきた.しかし,例えば分布の台が未知母数に依存しうるような非正則な場合には,これまで良く知られたフィッシャー情報量やカルバック・ライブラー情報量を用いることはできず,伝統的な手法が使えなくなる. 本年度は,台が有界であり,かつその端点が未知であるような確率分布に対して,その端点の逐次点推定方式および逐次区間推定方式を与えた.また,点推定において標本抽出に対する費用が非常に小さくなるような場合に漸近(一次)有効となることを示した.さらに,区間推定においては区間幅が非常に小さくなる場合に,漸近一致かつ漸近(一次)有効であることを示した. 有界な台を持つ非正則な確率分布に対するこれまでの研究では,一様分布のように分布形を特定して推測を考える場合がほとんどであった.本研究で与えた逐次推測形式は,分布系を特定する必要が無く,適用範囲は非常に広いものとなっている.
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