研究概要 |
完全差集合族とは、巡回群Z_v.の部分集合族で、1≦d≦(v-1)/2の範囲でどのdに対しても同一部分集合内に入っているd=x-y(mod v)の順序付きペア(x,y)がちょうど一つである組合せ構造である。完全差集合族は電波天文学での移動アンテナ間の間隔取り方問題に応用される。レーダー配列問題は上記問題の高次元への拡張であり、飛行船の追跡管制技術などに応用されている。本研究の目的は、均質一様差行列など新しい概念を導入することにより、完全差集合族に関する体系的な新しい構成法を発見し、レーダー配置問題に応用することである。完全差集合族に関連する情報通信・情報セキュリティへの応用についても、組合せ論的立場から研究する。 平成21年度は、主に完全差集合族の拡張である差三角集合の構成問題に取組んだ。Chu・Colbourn・Golomb (2005)は単調有向デザインを導入し、単調有向デザインに基づいた差三角集合の再帰的構成法を示した。Ge・謬・Sun(投稿中)はコンピュータ・サーチや穴付き組合せ構造に基づいた再帰的構成法により部分集合のサイズが4である完全差集合族や行数が3である均質一様差行列の例を数多く構成し、Ge・Huang・繆(掲載済み)はGe・繆・Sun(投稿中)が構成した均質一様差行列の例などを用いて、部分集合のサイズが3と4の単調有向デザインの存在性がほとんど解決した。繆と藤原は、完全差集合族に関連する周波数ホッピング系列や秘密分散法、遺伝子情報解析などについても、いくつかの面白い結果を得た。
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