研究概要 |
完全差集合族とは、{0,1,…,v-1}の有向部分集合の族で、1≦d≦(v-1)/2の範囲でどの整数dに対しても同一有向部分集合内に入っていて、d=x-yとなる順序付きペア(x,y)がちょうど一つである組合せ構造である。完全差集合族の応用は移動アンテナ間の間隔取り方問題である。レーダー配列問題は上記問題の高次元への拡張であり、飛行船の追跡管制技術などに応用されている。本研究では、完全差集合族に関する体系的な新しい構成法を発見し、レーダー配置問題に応用することを目的にする。完全差集合族に関連する情報通信・情報セキュリティへの応用についても、組合せ論的立場から研究する。 平成21年度は、主に完全差集合族および均質一様差行列の構成問題に取組んだ。完全差集合族のマルチメディア指紋における不正ユーザの追跡問題への応用も考えた。Ge・繆・Sun(掲載済み)は直接構成法や「穴付き」組合せ構造に基づいた再帰的構成法により、有向部分集合のサイズが4である完全差集合族や行数が3である均質一様差行列の無限系列を数多く構成した。藤原・繆(掲載済み)は完全差集合族を用いて、同期通信に使える多重comma-free符号の構成法を示した。Cheng・繆(掲載予定)とCheng・Ji・繆(投稿中)は完全差集合族をマルチメディア指紋問題に適用し、マルチメディア指紋符号の符号語数の上界や最適なマルチメディア指紋符号の構成、追跡アルゴリズムの開発について、いくつかの面白い結果を得た。
|