1次元の2階微分作用素は、弦の振動の記述をはじめ、1次元拡散過程の記述など多くの場面で現れる。この作用素に関するスペクトル理論はWeyl-Stone-Titchmarsh-Kodairaの展開定理が古典的であるが、ここでは差分作用素も含むように一般化された2階微分作用素を考える。この一般化は逆問題を考える上で本質的であることが知られていて、特に左端が反射壁であるとき、作用素とスペクトル関数(あるいはそれを定めるHerglots関数)の間の完全な1対1対応がKreinによって与えられている。これをKreinの対応という。この対応の研究は最近、小谷真一氏により大きく発展し、左端が(Weylの分類で)極限円型の境界の場合にまで拡張された。本研究の成果は以下の通りである。 1)小谷氏は微分作用素と対応するHerglots関数の1対1対応およびある種の両連続性を証明したが、本研究ではその対応を、より広いクラスに拡張するとともに、そのHerglots関数をexponentにもつような加法過程を与えた。このことにより、1次元拡散過程と加法過程の間の密接な関係が明らかにされ、双方向の応用が期待出来る。 2)スペクトル関数の漸近挙動と、微分作用素の漸近挙動との間の完全な対応関係を証明した。確率論的に言えば、零再帰的拡散過程の遷移確率の漸近挙動について知られていた対応関係を、正再帰的な場合や一時的な場合にまで拡張出来たことになる。
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