研究課題
1次元2状態の基本的な量子ウォークに関しては既に多くの知見が得られているので、それを拡張したモデルの局在化と極限定理などについて引き続き研究を行った。具体的には、空間的に非一様な場合で、空間的に一様なアダマールウォークを含むクラスである。このクラスでは、局在化が起きることはすでに証明されているが、さらに、極限測度と弱収束定理を得ることに成功した。このクラスに属する量子ウォークは、非自明な最も簡単な局在化が起きるモデルであり、その意味でも大変興味深いモデルである。その証明の方針を別の角度から眺めることにより、空間的に一様なアダマールウォークのある意味での定常測度を具体的に求めることが出来た。また、アダマールウォークの場合に、その再帰確率に関する母関数が、古典の2次元単純ランダムウォークの場合と同様に、楕円積分で表現されるという面白い結果を得ることに成功した。さらに、1次元の記憶を持つ量子ウォークに関しても、その極限測度と弱収束定理を求めることが出来た。また、以上は1次元の量子ウォークの結果であるが、最近、有限個の半直線を1点(これを原点と呼ぶ)で結んだある種スターの上での量子ウォークを解析し、その極限測度と弱収束定理を求めることが可能となった。特に、原点以外の点ではその確率が振動していて複雑な振る舞いをしているが、それに関しても厳密に解くことが出来た。このように新たな量子ウォークのモデルに関しても、その弱収束定理を求めることが出来たが、いずれもその極限測度は、簡単な有理式(主に多項式)掛ける今野関数とディラック測度との線形和になっており、ある種のユニヴァーサリティ・クラスの存在が示唆さる。今後の興味深い研究対象である。
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Quantum Information Processing
巻: Vol.9, No.3 ページ: 405-418
DOI:10.1007/s11128-009-0147-4
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