研究概要 |
1.n次元球領域における(nは自然数),ある反応拡散方程式のノイマン境界値問題を取りあげ,中心にピークをもつ定常パルス正値解の分岐について理論的研究を行った.特に,任意のn≧2の場合にこのような解が自明解からトランスクリティカル分岐により発生し,その後サドルノード分岐が起こることを証明し,また,n=1の場合には定常パルス正値解の完全な分岐構造を決定した.これらの結果により,生物の走行性のモデルであるKeller-Segel方程式や,生物の形態形成のモデルであるGierer-Meinhardt方程式の定常解の基本的な分岐構造が明らかとなった. 2.21年度の研究成果を発展させ,偏微分方程式系の定常解に対応した,可逆的な常微分方程式系の周期解の1パラメータ族の分岐に対する摂動的な方法を高次元の場合に拡張した.ホモクリニック軌道の分岐とは異なり,周期軌道の変分方程式の可積分性との関連性はないものの,パラメータの稠密な値において周期軌道の分岐が起こることを明らかにした.このような現象は一般的な微分方程式系では起こらないものである.さらに,本手法を(二等辺)三体問題に適用し,22年度に数値計算により確認されている,円周オイラー解と呼ばれる周期軌道から無限個の相対周期軌道族が分岐し発生することを数学的に証明し,およびMelnikovの方法と呼ばれる摂動法によるハミルトン系に対する古典的な結果との関連性を明かにすることを計画している. 3.本研究で得られた成果を総括し,無限次元力学系の分岐およびホモ/ヘテロクリニック挙動に関して重要な知見を得ると共に,無限次元力学系の非線形現象に対する解析的および数値的手法の確立に貢献した.
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