研究概要 |
近年,金融の分野で高頻度データの解析が注目されていて,高頻度データに基づく非エルゴード的確率微分方程式モデルの統計的漸近理論の研究は理論と応用の両面において重要視されている.しかしながら,エルゴード的確率微分方程式モデルと比較して,非エルゴード的確率微分方程式モデルに対する統計推測理論の整備は不十分である.本年度は主に高頻度データに基づいた確率微分方程式モデルのボラティリティパラメータの統計的漸近理論について研究を行った.区間[O,T]上で定義された確率微分方程式から得られた観測幅T/nのn個の離散データを用いて,ボラティリティパラメータの推定量を構成し、その漸近的性質(nが十分大きい場合)について考察を行った.具体的には, (i) 非エルゴード的な確率微分方程式に対して,局所正規近似に基づく統計的確率場を構成し,吉田朋広氏(Yoshida(2005)to appear in Ann. Inst. Stat. Math.)により導出された多項式型大偏差原理を応用して,統計的確率場の多項式型大偏差不等式を証明した. (ii) 局所正規近似に基づく近似尤度関数を用いて,最尤型推定量とベイズ型推定量を導出し,それらの漸近混合正規性(安定収束)及びモーメントの収束を示した. (iii) 計算機数値実験(シミュレーション)により,最尤型推定量とベイズ型推定量の漸近的挙動を考察し,高頻度データに対して良いパホーマンスをもつことが確認された.
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