(1) 2009年メキシコで発生したA(H1N1) 新型インフルエンザは、2009年日本にも上陸しこの年大流行を引き起こし推計2件万人を超える感染者を出した。今後予想される高病原性インフルエンザ流行抑制対策のためのシミュレーションの基礎として今回の流行の様相を分析することが重要である。 (2) 福岡都市圏を対象とした大規模モデルを構築し、高病原性新型インフルエンザが同都市圏に侵入した場合を想定し、大型シミュレーションを実行した。感染者の拡大のプールを提供する学校に焦点を当て、その主要な対策である学級閉鎖の基準の定め方の指針を提供した。すなわち従前の季節性インフルエンザに適応されている学級閉鎖基準は感染抑制につながらず、厚生労働省の例示する新基準に対しては、感染ピークが遅くなりかつピーク人数が減少すること、しかしたの対策が取られなければ総感染者規模の低減にはつながらないこと、福岡市が2009年新型インフルエンザ流行時に定めた極めて厳しい学級閉鎖基準を採用すると流行抑制、総感染者低減につながるとの知見を得た。 (3) 福岡都市圏では、感染者、接触者追跡抗ウイルス薬予防投薬等の施策をとらない限り、複数(3人以上)の外部からの感染者の侵入に際して、ほぼ確実にpandemicが発生することの知見を得た。したがって、侵入後の流行抑制対策が重要となる。 (4) 新型インフルエンザワクチンの開発には日時を要することが危惧されている。ワクチン接種開始が侵入後120日程度となると、流行のピークを迎え抑制につながらない。このため、学級閉鎖によりピークを遅らせることが重要となる。
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