研究概要 |
本年度は標本路に飛躍がある1次元反射壁過程について考察を進め,実際に極限分布や定常分布がある具体例を示した。さらに多次元反射壁過程の場合については,領域が有界の場合にマルコフ連鎖に対する結果かち極限分布や定常分布の存在がわかる場合があることが分かった。以上のことの部分的な結果は、論文として発表した(Tokyo J. Mathl. 32-1, 1-17(2009))。この結果,さらに多次元の領域に対する考察の見通しがよくなり,今後の研究が期待される。 一方,数理生物学的な応用面では,まずセミ類の羽化と交尾の生態に着目し,羽化生態の性差が交尾率に大きな影響があることを数学的な考察によって示すことに成功した。また,この問題において,進化などの時間的な変化を考える上で,定常状熊を考える重要性を認識し,今後の研究につなげる予定である。この結果の一部は,論文として投稿済みで,すでに受理されている(Mathematical Bioscience and Engineering, 7-2, (2010))。 さらに,DNAの放射による損傷である2本銷切断に関する数理モデモの研究から,確率過程の極限分布や定常分布に関する問題が存在することに気づき,今後どのように数学の問題としてフィードバックするか考察中である。2本銷切断は発癌のメカニズムにも関連する重要性を持っている。このことに関する結果の一部は,日本放射線影響学会第52回大会で発表した。
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