研究概要 |
研究代表者は離散確率モデルとして平成22年度から引き続き衝突のある玉と壺のモデルである衝突確率の研究を行った。平成22年度は各玉の壺への投入確率が非一様なモデルを考えていたが、平成23年度は投入確率にある種の対称性を仮定して衝突が起こりやすいかどうかを調査することを目的として研究を進めた。ところで、古典的な占有問題に関しては分布関数が「Schur凸」であるという性質を導いて占有しやすいかどうかの議論が知られており、これにより、複雑な直接計算を回避することができる。Schur凸性を示すには「Schurの条件」と言われている不等式を直接示してもよい(実際クーポンコレクタ問題に関するShur凸性に関しては、基本的な教科書であるMarshall, Olkin, Arnold, Inequalities, Springer,(2011)に研究代表者の未発表論文が私信として記述されている)。一方で、Schurの条件を直接チェックすることなく一般的な定理の系としてSchur凸性が得られることも知られている。つまり、Schur凸性を保存する積分変換のクラスを定める定理がProschan, Sethuramanにより1970年代の後半に発表されており、これにより占有問題の他にも多くの応用例が得られている。この定理を衝突のあるモデルを念頭において、対応する一般的な定理を導いた。得られた結果はProschan, Sethuramanに現れる積分変換のクラスから自然に対応づけられる定理となった。しかしながら、衝突のある占有問題の一部では定理が適用できたものの、いくつかの場合は実際にはSchur凸ではなく、衝突のあるモデルとSchur凸性はそこまで相性が良いものであるとは言えないことが分かった。定理自体は他の応用も十分考えられることにより、23年度に行われた国際会議の論文としてまとめて発表した。
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