研究概要 |
非線形方程式の解をパラメータ連続的に追跡するためには,非線形問題の近似解あるいはパラメータを固定した点における非自明解の周りでの線形化により導かれる無限次元線形作用素の可逆性の保証および逆作用素の効率的なノルム評価が必要である.平成23年度は,昨年度からの研究の継続として,与えられた集合に含まれるすべての要素が固有値でない(固有値の非存在)ことを検証する汎用的な理論を連携研究者・長藤かおり准教授(九州大学・マス・フォア・インダストリ研究所)との緊密な共同研究により構築した。また,この理論に基づく逆作用素の作用素ノルムを効率的に評価する定式化・アルゴリズムおよび具体的な検証例を与えることにより,共同研究成果の有効性・適用性を確認した.さらに,問題を不動点定式化した際に,不動点の周りで引き込み性を持つ場合に対する簡便な非線形関数方程式の解の存在検証アルゴリズムを与え,無限次元Newton法に基づく解の精度保証方式を補完することに成功した.続いて,微分方程式の分岐曲線に対するパラメータ連続的存在検証法の研究に取り組み,パラメータを微小な区間に属する任意の値として連続的に表現することで,その区間に対する解の存在および局所一意性の保証と線形化作用素の可逆性の数値的検証を陰関数定理と併用することにより,解のパラメータ連続的包み込み手法の定式化を与えた.また,具体的な適用例として,Rayleigh-Benard問題を記述する2次元Oberbeck-Boussinesq方程式,FitzHugh-Nagumo型の反応拡散方程式に対する精度保証付き数値計算を行った.さらに,解曲線がターニングポイントを持つ場合のパラメータの踏み換え(ボーダリング)技法を提案する検証法に取り込むことが原理的に可能であることを確認した.
|