研究課題
本年度は主として以下の2つの研究を行った。集団遺伝学における基本的な確率モデルの一つである連続時間Moranモデルを含む出生死滅過程に対して、以下の研究を行った。出生死滅過程から、指定して一方の境界点に先に到達するという条件を課すことにより誘導される確率過程(条件付き確率過程)を考える。この誘導された確率過程に対して、右境界点と左境界点が反射壁境界条件もしくは吸収壁境界条件となる計4つの場合に対して推移確率の性質を明らかにした。その結果まとめて学術論文を作成した。また、この結果を用いて、誘導された確率過程がマルコフ過程となるための条件を明らかにするための準備的研究を行った。集団遺伝学に現れる二倍体生物集団における自然淘汰の互助的相互作用(2つの遺伝子座、もしくは、2つのDNA塩基座位を考え、どちらか一方に突然変異が生じると有害だが、2つの突然変異が共存すると、有害性が消失する座位間的相互作用)による分子進化の確率モデルをさらに一般化した第2の遺伝子座の遺伝子重複により第3の遺伝子座が生じた場合の互助的相互作用のモデルの定式化を行った。このモデル(Wright-Fisherモデル)を記述する離散時間マルコフ連鎖に対して、ある境界点への初期到達時間の性質、とくに、初期到達時間の平均のモデル・パラメータ依存性を考察を考察するためのコンピュータ・シミュレーションのプログラムを完成させた。
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Ann.Reports of Graduate School of Humanities and Sciences, Nara Women's University 25
ページ: 271-284
