「有限点集合に存在する凸体の離散幾何学的考察」について、2010年度は以下の進展をみた。 1. 内部に点を含まない凸6角形の存在性:1975年、P.Erdosは次の問題を提示した「3以上の任意の自然数kに対して、次の条件をみたすX(k)が存在するか;平面上の一般の位置(どの3点も同一直線上にない)にある少なくともX(k)個の点からなる任意の配置には、与えられた点を内包しない凸k角形の頂点に位置するk点が必ず存在する」。現在この問題はk≠6に対してすべて解決され、k=6の場合については「有限である」事が2006年に証明された。しかしk=6の場合についての正解は未だ決定されておらず、この20年間に行われた研究は、コンピュータを使って題意をみたさない配置を決定する事が中心であった。すなわち、内部に点を含まない凸6角形が存在しない配置を見つける事である。具体的には、1985年D.Avis氏とD.Rappaport氏が初めてその配置を決定するコンピュータ・プログラムを開発し、その後この方法がJ.O'Rourke氏を中心とする研究グループにより拡張され、現在のレコードは2003年にM.H.Ovemars氏によって発見された29点の配置がある。2010年度、我々はAvis&Rappaportのプログラムを再構築する事に成功し、設備備品により購入した高速コンピュータによる実験を本格始動した。将来的には、この値を増加させると共に、更にプログラムの改良を試みたいと考えている。 2. 与えられた点を被覆する円の存在性:この問題は連携研究者の細野潔氏との共同研究である。自明で無い結果を示す事が出来たので、2011年度の国際会議にて講演予定である。
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