研究概要 |
本研究の目的は、いくつかの具体的な問題を通して量子(非可換)確率論の基礎を検討することにある。現在の量子情報に関わる様々な理論は量子確率論をベースにしているが、そこに存在するいくつかの問題点を明らかにし、その解決を試みる。そこで、本研究では以下の順に研究を遂行する。 (1)量子情報理論、特に、量子エントロピー論、量子テレポーテーション理論、量子アルゴリズム論に存在するいくつかの問題点を取り上げ、それらを整理する。 (2)(1)で掲げた問題はどこまで従来の量子確率論の公理系で議論できるであろうか? (3)(2)の検討の下に、量子確率論の新たな数理を考える。 上記の目的に基づき,本年度は以下のような研究成果を得た. (i)量子アルゴリズムを用いたEXPTIME問題の解法,(ii)新しいスキームを用いた量子テレポーテーションの定式化,(iii)リフティング写像を用いた量子相互エントロピーの定式化,(iv)エンタングルメントの数理を取りいれたアライメント,(v)エンタングルメント尺度を用いた2量子状態の分類,(vi)エンタングルメント通信路とOhya相互エントロピーを用いた判定. また,これらの研究成果の発表を数多く行った. さらに,これらの量子論の基礎研究から副産物的生まれた,新しい暗号理論について,以下のような研究を行った. (vii)非可換代数を基にしたストリーム暗号の開発,(viii)新しい非対称鍵交換プロトコルの開発. これらの成果は日本イタリア共同開催の国際ワークショップを通じて発表され,新聞などに報道された.また,これらのうちいくつかは,現在特許出願準備中である. これらの成果は,本研究課題の達成のため非常に重要な位置を占めており,来年度以降もこれらの成果を基にしながら研究を行なう予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である,量子論の基礎を検討するという課題について十分議論が行われ,その結果として数多くの論文が発表され,また,様々な研究集会において成果を発表できた.
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