研究概要 |
平成22年度に上記補助金を受けさせて頂き,課題にある研究を遂行させて頂いた.本研究の目的は確率論,解析学,グラフ理論,数論,計算機科学のそれぞれの専門分野から総合的に応用に適した無限次元確率解析を共同研究し,その立場からの量子化法,さらに量情報解析として新しいアプローチを展開することにあった.平成21年度に引き続き、今年度の研究では特に,エキゾチック・ラプラシアンに基づいた確率解析をもとにホワイトノイズ理論において更に新しい展開がなされた.エキゾチックラプラシアンは2階微分の高階チェサロ和として定義される特殊な作用素であるが,ホワイトノイズの高階微分の汎関数空間上で,ホワイトノイズ高階微分の第2量子化作用素を用いることにより,異なるオーダーのエキゾチックラプラシアン同士の相互関係式を得た.加えてエキゾチック・ラプラシアンに基づくホワイトノイズ高階微分理論の展開を行なった.本成果は国際論文誌IDAQPに掲載された.本成果は平成21年度の成果である無限次元ブラウン運動の構成法に繋がり,無限次元ブラウン運動のある種の微分がエキゾチックラプラシアンによって生成される超確率過程であることも示される.現在論文としてまとめている.更にローマ・トルヴェルガタ大学ヴォルテラ研究所のアカルディ教授とは,本成果を基に共同研究として,量子ホワイトノイズ高階微分理論も展開を続けている.この路線に沿った量子情報解析の構築が可能になったことも本課題の成果の独創的な意義のある点である.抽象ウィナー空間上でこれらの結果の展開に関する共同研究および数論への関連性も引き続き,ルイジアナ州立大学郭教授,本研究の連携研究者と進めている.また,幾何ブラウン運動の無限次元ラプラシアンによる特徴付けを得ることもでき,ファイナンスへの応用を検討している.この成果は国際論文誌ROSEに掲載された.関連した研究成果として,移民を伴うベルヌイ型のガルトン-ワトソン分枝過程の定常分布の存在を具体的な形を決定することにより証明することも出来た.この成果は国際論文誌COSAに掲載予定である.
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